ヘキサクロリド白金(IV)酸カリウム (ヘキサクロリドはっきん よん さんカリウム、英 : potassium hexachloroplatinate(IV) )は、化学式 K2 [PtCl6 ] で表される白金 (IV)のクロリド 錯体 塩 で無機化合物 の一種である。
製法
白金粉末を暖めた塩酸 中で撹拌しながら過酸化水素 または塩素 を通じながら溶解し、ヘキサクロリド白金(IV)酸 水溶液を得る。なお白金の溶解に王水 を用いるとニトロシル NO+ 配位子 が混入し除去しにくい[ 2] 。
Pt
+
6
HCl
+
2
H
2
O
2
⟶ ⟶ -->
H
2
[
PtCl
6
]
+
4
H
2
O
{\displaystyle {\ce {{Pt}+ {6HCl}+ 2H2O2 -> {H2[PtCl6]}+ 4H2O}}}
Pt
+
2
HCl
+
2
Cl
2
⟶ ⟶ -->
H
2
[
PtCl
6
]
{\displaystyle {\ce {{Pt}+ {2HCl}+ 2Cl2 -> H2[PtCl6]}}}
このヘキサクロリド白金(IV)酸にやや過剰の塩化カリウム 水溶液を加えると目的物が析出する。
[
PtCl
6
]
2
− − -->
+
2
K
+
⟶ ⟶ -->
K
2
[
PtCl
6
]
{\displaystyle {\ce {{[PtCl6]^{2-}}+2K^{+}->K2[PtCl6]}}}
性質
比較的安定な黄色結晶または粉末で、水に比較的不溶性のカリウム 塩であり、エタノール の存在下ではさらに溶解度 が下がるため、カリウムの定量分析 に用いられる。ルビジウム 塩 Rb2 [PtCl6 ] およびセシウム 塩 Cs2 [PtCl6 ] はさらに溶解度が小さい。アンモニウム 塩 (NH4 )2 [PtCl6 ] も溶解度が低いが、ナトリウム 塩 Na2 [PtCl6 ] は易溶性である。
また二塩化ヒドラジニウム によって還元 することで、テトラクロリド白金(II)酸カリウム が得られる[ 3] 。
結晶構造
固体は立方晶系 に属し、八面体形 に結晶する。広義の逆蛍石型構造 に属し、フッ化カルシウム のカルシウム イオンの位置にヘキサクロリド白金(IV)酸イオン [PtCl6 ]2- 、フッ化物 イオンの位置にカリウムイオン K+ が配置する。単位格子 中に [PtCl6 ]2- が4個位置し面心立方格子 を形成し、K+ が正四面体 4配位の間隙に8個存在する。
その格子定数 は a = 9.725 Å 、ヘキサクロリド白金(IV)酸イオン [PtCl6 ]2- は正八面体 型で Pt-Cl 結合長 は2.33 Åである[ 4] 。白金原子の電子配置は 5d6 の低スピン型で速度論的に置換不活性であり[ 5] 、d2 sp3 混成軌道 を取る。
ヘキサクロリド白金(IV)酸イオン
出典
^ D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982).
^ 日本化学会編 『新実験化学講座 無機化合物の合成III』 丸善、1977年
^
Keller, R. N.; Moeller, T. (1963). “Potassium Tetrachloroplatinate(II)”. Inorg. Synth. 7 : 247-250. doi :10.1002/9780470132333.ch79 .
^ 『化学大辞典』 共立出版、1993年
^ F.A コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年