ピロリン酸塩
識別情報
PubChem
644102
ChemSpider
559142
E番号
E450 (増粘剤、安定剤、乳化剤)
DrugBank
DB04160
KEGG
C00013
ChEBI
[O-]P(=O)([O-])OP(=O)([O-])[O-]
InChI=1S/H4O7P2/c1-8(2,3)7-9(4,5)6/h(H2,1,2,3)(H2,4,5,6)/p-4
Key: XPPKVPWEQAFLFU-UHFFFAOYSA-J
InChI=1/H4O7P2/c1-8(2,3)7-9(4,5)6/h(H2,1,2,3)(H2,4,5,6)/p-4
Key: XPPKVPWEQAFLFU-XBHQNQODAI
特性
化学式
P2 O7 4−
特記なき場合、データは常温 (25 °C )・常圧 (100 kPa) におけるものである。
ピロリン酸塩 (ピロりんさんえん、ピロ燐酸塩、pyrophosphate )とはピロリン酸 則ち二リン酸(diphosphate)の塩(えん) 或いは陰イオン (ピロリン酸イオン)P2 O7 4− を指す。溶液中ではピロリン酸イオン、各種ピロリン酸水素イオンまたは加水分解によって生じるピロリン酸などとして存在する為、日本語では単に(総称的に)ピロリン酸と参照されることが多い(寧ろピロリン酸イオンとしての存在は稀)が、このような生化学における分子動態を論ずる文脈では、英語で言及する場合ピロリン酸分子を指すpyrophosphoric acidではなく(総称的に)pyrophosphateの語が用いられ、これは日本語のピロ燐酸塩を指しているという訳ではない。以下の言葉使いもその通りである。
食品添加物 として、二リン酸類はE450 として知られている。具体的な塩としてはナトリウム塩やカリウム塩が存在する。
化学
ピロリン酸は初めはリン酸を加熱することによって調製されていた(pyro- はギリシャ語で火を意味する)。よい錯化剤 であり、工業化学において様々な用途で使用されている。ポリリン酸 類に含まれる最も小さな単位である。
ピロリン酸という用語は、ジメチルアリル二リン酸 (dimethylallyl pyrophosphate) のように無機リン酸と生物化合物との縮合 により生成するエステルの名称でもある。この結合は高エネルギーリン酸結合 とも呼ばれている。
ピロリン酸テトラエチル の合成は、1854年にPhilip de Clermountによってフランス科学アカデミーの会合で初めて発表された。
生化学
ピロリン酸は生化学において非常に重要である。アニオンP2 O7 4− はPPi と略記され、細胞 中で起こるATP のAMP への加水分解 によって生成する。
ATP
⟶ ⟶ -->
AMP
+
PP
i
{\displaystyle {\ce {ATP -> {AMP}+ PP_i}}}
例えば、ヌクレオチドが成長中のDNA あるいはRNA 鎖にポリメラーゼ によって取り込まれる時、ピロリン酸(PPi ) が解放される。ピロホスファートと3'-ヌクレオチド一リン酸(NMPあるいはdNMP)との反応である加ピロリン酸分解 (pyrophosphorolysis) は重合反応 の逆反応である。オリゴヌクレオチド からは対応するヌクレオチド三リン酸(DNAからはdNTP、RNAからはNTP)が除去される。
ピロリン酸アニオンの構造はP2 O7 4− であり、ホスファート の酸無水物 である。水溶液 中では不安定であり、無機リン酸へと加水分解される。
P
2
O
7
4
− − -->
+
H
2
O
⟶ ⟶ -->
2
HPO
4
2
− − -->
{\displaystyle {\ce {{P2O7{}^{4-}}+H2O->2HPO4{}^{2-}}}}
PP
i
+
H
2
O
⟶ ⟶ -->
2
P
i
{\displaystyle {\ce {{PP_{i}}+H2O->2P_{i}}}}
酵素触媒非存在下では、ピロリン酸、鎖状三リン酸、ADP 、ATPといった単純なピロリン酸類の加水分解反応の進行は、高酸性媒質中以外では通常極度に遅い[ 1] 。
この無機リン酸塩への加水分解によってATPのAMPおよびPPi への切断といった生化学反応は不可逆となっている。
PPi は石灰化 を妨げるのに十分な量が髄液 、血漿 、尿 に存在しており、細胞外液 (ECG) におけるヒドロキシアパタイト の天然阻害剤であると考えられる[ 2] 。細胞は細胞内PPi をECFに通すと考えられている[ 3] 。ANK (英語版 ) は細胞外PPi レベルを保つための非酵素的細胞膜PPi チャネルである[ 3] 。膜PPi チャネルであるANKの機能低下は細胞外PPi 量の低下と細胞内PPi の上昇と関連している[ 2] 。エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ (英語版 ) (ENPP) は細胞外PPi の上昇のために機能していると考えられている[ 3] 。
脚注
^ Huebner PWA, Milburn RM (May 1980). “Hydrolysis of pyrophosphate to orthophosphate promoted by cobalt(III). Evidence for the role of polynuclear species”. Inorg Chem. 19 (5): 1267–72. doi :10.1021/ic50207a032 .
^ a b Ho AM, Johnson MD, Kingsley DM (Jul 2000). “Role of the mouse ank gene in control of tissue calcification and arthritis”. Science. 289 (5477): 265–70. doi :10.1126/science.289.5477.265 . PMID 10894769 .
^ a b c Rutsch F, Vaingankar S, Johnson K, Goldfine I, Maddux B, Schauerte P, Kalhoff H, Sano K, Boisvert WA, Superti-Furga A, Terkeltaub R (Feb 2001). “PC-1 nucleoside triphosphate pyrophosphohydrolase deficiency in idiopathic infantile arterial calcification” . Am J Pathol. 158 (2): 543–54. doi :10.1016/S0002-9440(10)63996-X . PMC 1850320 . PMID 11159191 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1850320/ .
推薦文献
関連項目
外部リンク