『ビフォア・アンド・アフター・サイエンス』(Before and After Science)は、ブライアン・イーノが1977年に発表した、ソロ名義では5作目のスタジオ・アルバム。
背景
「カーツ・リジョインダー」では、クルト・シュヴィッタースの作品『ウルソナタ』におけるシュヴィッタースの肉声が引用された[1]。「キングス・レッド・ハット(King's Lead Hat)」のタイトルは、後にイーノと共同作業を行うバンド、トーキング・ヘッズ(Talking Heads)のアナグラムで[5]、この曲は1978年にシングル・カットされ、B面にはスナッチとのコラボレーションによる楽曲「R.A.F.」が収録された[6]。
イーノは1977年6月、クラスターとのコラボレーション・アルバムの第1作に当たる『クラスター&イーノ』をレコーディングしており[7]、本作収録曲「バイ・ディス・リヴァー」もクラスターのハンス=ヨアヒム・レデリウス及びディーター・メビウスとの共作である[8]。
その後、イーノのソロ・ワークはインストゥルメンタル主体となるが、1990年10月には、本作以来約13年ぶりのボーカル・アルバム『ロング・ウェイ・アップ』(ジョン・ケイルとの連名)がリリースされた[9]。
反響
スウェーデンでは1978年1月27日付のアルバム・チャートで初登場30位となり、3回(6週)トップ40入りして最高25位を記録した[3]。アメリカでは『ヒア・カム・ザ・ウォーム・ジェッツ』(1974年)以来のBillboard 200入りを果たし、1978年6月17日に最高171位を記録した[4]。ニュージーランドでは1978年7月16日付のアルバム・チャートで初登場35位となり、7週連続トップ40入りして最高18位を記録した[2]。一方、全英アルバムチャート入りは逃す結果となった[10]。
評価・影響
トム・カーソンは1978年5月18日付の『ローリング・ストーン』誌において、『ヒア・カム・ザ・ウォーム・ジェッツ』や『テイキング・タイガー・マウンテン』といった旧作が「良い意味で極めて楽しめる作品で、ロックンロールしていた」のに対し、本作は「厳粛かつ抑制的で、表面的には親しみやすそうだが実は謎めいた作品」であると評した[11]。また、デヴィッド・ロス・スミスはオールミュージックにおいて満点の5点を付け、全体像に関して「ポップ・フォーマットに則ったアルバムだが、サウンドは唯一無二で主流から著しくかけ離れている」、「スパイダー・アンド・アイ」に関して「このアルバムの頂点」「霞がかかったような激情により、悲しみと希望が同居している」と評している[12]。
『NME』誌が選出した1977年の最優秀アルバムでは14位にランク・インした[13]。また、ピッチフォークのスタッフが2004年に選出した「1970年代のベスト・アルバム100」では100位となった[14]。
「バイ・ディス・リヴァー」は、後に多くのアーティストによってカヴァーされた。例としてマーティン・ゴア『カウンターフィート2』(2003年)[15]、吉田兄弟『YOSHIDA BROTHERS』(2005年)[16]、ホリー・スロスビー(英語版)「One of You for Me」(2007年、EP)[17]、セラフィナ・スティア(英語版)『チープ・デモ・バッド・サイエンス』(2007年)[18]、オピウム・カルテル(英語版)『Night Blooms』(2009年)[19]、アルヴァ・ノト + 坂本龍一『summvs』(2011年)[20]等が挙げられる。
収録曲
特記なき楽曲はブライアン・イーノ作。
- ノー・ワン・レシーヴィング - "No One Receiving" - 3:52
- バックウォーター - "Backwater" - 3:43
- カーツ・リジョインダー - "Kurt's Rejoinder" - 2:55
- エナジー・フールズ・ザ・マジシャン - "Energy Fools the Magician" - 2:04
- キングス・レッド・ハット - "King's Lead Hat" - 3:56
- ヒア・ヒー・カムズ - "Here He Comes" - 5:38
- ジュリー・ウィズ… - "Julie With ..." - 6:19
- バイ・ディス・リヴァー - "By This River" (Brian Eno, Hans-Joachim Roedelius, Dieter Moebius) - 3:03
- スルー・ハロウ・ランズ - "Through Hollow Lands (for Harold Budd)" - 3:56
- スパイダー・アンド・アイ - "Spider and I" - 4:10
参加ミュージシャン
脚注
- ^ a b CD英文ブックレット内クレジット
- ^ a b charts.org.nz - Brian Eno - Before And After Science
- ^ a b swedishcharts.com - Brian Eno - Before And After Science
- ^ a b “Brian Eno Chart History - Billboard 200”. Billboard. 2019年5月1日閲覧。
- ^ Wolk, Douglas (2017年8月3日). “Brian Eno: Here Come the Warm Jets/Taking Tiger Mountain (By Strategy)/Before and After Science Album Review”. Pitchfork. Condé Nast. 2019年5月1日閲覧。
- ^ Brian Eno - King's Lead Hat (Vinyl, 7", 45 RPM) | Discogs
- ^ Waynick, Michael. “Cluster & Eno - Cluster, Brian Eno”. AllMusic. 2019年5月1日閲覧。
- ^ Stubbs, David (2015年10月22日). “Harmonia - 10 of the best”. The Guardian. Guardian News & Media. 2019年5月1日閲覧。
- ^ O'Leary, Chris (2017年10月15日). “Brian Eno / John Cale: Wrong Way Up Album Review”. Pitchfork. Condé Nast. 2019年5月1日閲覧。
- ^ BRIAN ENO | full Official Chart History | Official Charts Company
- ^ Carson, Tom. “Before and After Science”. Rolling Stone. 2019年5月1日閲覧。
- ^ Smith, David Ross. “Before and After Science - Brian Eno”. AllMusic. 2019年5月1日閲覧。
- ^ “1977 Best Albums And Tracks Of The Year”. NME. Time Inc. (UK). 2019年5月1日閲覧。
- ^ “The 100 Best Albums of the 1970s”. Pitchfork. Condé Nast (2004年6月23日). 2019年5月1日閲覧。
- ^ Martin L. Gore - Counterfeit² (CD, Album) | Discogs
- ^ Yoshida Brothers - Yoshida Brothers (CD, Album) | Discogs
- ^ Holly Throsby - One Of You For Me (CD, EP) | Discogs
- ^ Serafina Steer - Cheap Demo Bad Science (CD, Album, Enhanced) | Discogs
- ^ The Opium Cartel - Night Blooms (CD, Album) | Discogs
- ^ “坂本龍一×ALVA NOTO、コラボシリーズ最終作品が完成”. ナタリー (2011年6月2日). 2019年5月1日閲覧。
外部リンク