ソン・ヨンテ(宋 龍台、송 용태、1952年9月20日 - )は、大韓民国の人間文化財、康翎タルチュム芸能保有者、ミュージカル俳優、演劇俳優、テレビ俳優、映画俳優、声優。
役者としての活動
1970年、演劇俳優デビューに続き、2年後の1972年に映画『平壌爆撃隊』の端役で映画俳優デビュー。京畿道安養映画芸術学校(現在の安養芸術高等学校)在学中、民俗仮面舞踊劇タルチュムに傾倒した末、2002年2月5日韓国の無形文化財第34号康翎タルチュムの芸能保有者として人間文化財(韓国の人間国宝)に登録された。以後は百済芸術大学、青江文化産業大学でミュージカル学科兼任教授として活動した。他にも、声優としての活動も行っている(声の出演作については後述を参照)。
ミュージカルでは『ハムレット』『ウエスト・サイド・ストーリー』『ロミオとジュリエット』等、数々の著名な作品に出演。主演男優賞を韓国で初めて複数回受賞し、助演男優賞も受賞している。『ジーザス・クライスト・スーパースター』では、金髪に厚化粧、華美なアクセサリーに露出の多い扮装で、淫らなヘロデ王役を演じた[1]。『美女と野獣』ではコグスワース役、『オズの魔法使い』では臆病なライオン役で着ぐるみを着て出演し[2]、『男ナンセンス』『ナンセンス A-men』では修道女に[3]、『ナンセンス ナッツクラッカー』では神父やバレリーナに扮装し[4]、コミカルな歌と踊りで笑いを誘っている。2017年から2018年まで『ザ・ラストキス』でオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ役を演じている。
2015年の演劇『道を去るのに良い日』では、国民の母と呼ばれる女優キム・ヘジャや、俳優イム・ドンジンの娘イム・イェウォン[5]と家族の役で共演している。
テレビドラマにも出演しているが、康翎タルチュムとミュージカルの公演が中心な為、短時間で出演が終わる脇役を務める事がほとんどである。時代劇でも現代劇でも、君主や国家元首など首領的な立場の役が多いが、厳格な役柄だけでなく、弱気な君主、大勢に阿る大監、噛ませの将軍、コミカルな閻魔大王や僧侶、名前不明の脇役まで幅広く演じている。尚、『ディア・マイ・フレンズ』でもキム・ヘジャと夫婦役であったが、本作では遺影と押入内の亡骸のみの出演で、台詞が無い。
その他、2014年韓国文化財財団主催の畳鐘儀式に李氏朝鮮時代の王役で出演し[6]、2020年には第1回朝鮮王陵文化祭にて創作劇に出演している[7]。
康翎タルチュム芸能者/人間文化財
タルチュムとの出会いは安養映画芸術学校在学中。発表会の為に習ったが、正式に学ぶ為に康翎タルチュムの芸能保有者である金實子と金正順に自ら弟子入りした。
2002年2月5日、韓国の文化財庁によって無形文化財第34号康翎タルチュム芸能保有者として、俳優出身者としては初めて人間文化財に登録された。
韓国文化財財団のインタビューでは、「タレント活動をしていなかったら康翎タルチュムのみやっていただろう」と語っている。経済的な理由からタレント活動を制限しないまま、1970年以降、康翎タルチュムの全公演に出演している[8]。
劇中では水玉模様の赤い衣装で、チュィバリ(醉發/酔っ払った僧あるいは遊び人と解釈されている)という主要人物の一人を演じ、歌と舞を披露しているが、自分の役割だけでなく、二時間に及ぶ康翎タルチュムの全場面をこなす事ができるという。
また、朴東信に師事して仮面制作も学び、面とチュィバリの子供に当たる人形も自ら制作している[9]。
1984年以降、日本や欧米など、世界各地でも公演を行っている。
人物・逸話
宗教はキリスト教(プロテスタント)。
康翎タルチュムの全公演に出演しながら舞台やテレビドラマにも出演しているが、「仕事は楽しいから多忙な事は苦にならない」[10]「仕事をしていないとかえって病気になる」[11]「引退したら棺桶に直行すると思う」[12]と話している。
舞台で女装をする事などに抵抗は無いのかという質問には、「逆に変身が楽しいんだよ。お客さんが笑ってくれて、あれこそが役者の姿だと思ってくれれば嬉しい」と答えている[13]。
ミュージカル『プロデューサーズ』で、興行を悪用して詐欺を目論むプロデューサーを演じる際には、逃亡したプロデューサーが過去に多くいた事や出演料を踏み倒された経験を語ったが[12]、この公演では無事、主演男優賞を獲得している。しかし、2016年にシン・グ、キム・ジンテと共にトリプルキャストでミッキー役を務める予定だったミュージカル『ロッキー』は直前になって運営側の都合で開催が中止となっている[14]。
KBSドラマ『大祚栄』では唐の太宗李世民を演じ、ネットの掲示板では「甥の死や、兵や臣下を失って悲しむ姿を演じるソン・ヨンテを見て、敵国の皇帝でありながら泣きそうになった」「李世民の後も、唐の皇帝役はソン・ヨンテが演じれば良いのに」という賞賛の意見が相次いだ[15]。また、KBSドラマ『逃亡者 PLAN B』の僧侶役は韓国のネットユーザーの間で“キューティー僧侶”と渾名され話題になった[16]。
康翎タルチュムについては、「最初に学んだ当時はつらい事が多かった。面が家の中にあると鬼が出て行かないので先祖供養もできないと、家の大人達からあらゆる侮蔑をもうこれ以上無いってくらいに受けたんじゃないかな。元々大海原を航行する船乗りになる夢があったから、やめようと思った事も時々あった。でも私達の文化を直々に伝えるという大事な責任を捨てる事はできなかった」と語っている[11]。
二人の師匠、金實子と金正順は実の親以上の関係としている[8]。
兵役中にタルチュムを応用した銃剣道を編み出して、周囲に教えていた事もあったという[9]。
韓国文化財財団のインタビュー動画では、2014年に起きたセウォル号沈没事故の犠牲者と遺族に対して哀悼のメッセージを送っている[8]。
学歴
- 安養芸術高等学校
- 檀国大学校大衆文化芸術大学院芸術学 修士
略歴
- 1977-1985 ソウル市立歌舞団(現ソウル市立ミュージカル団)副首席団員
- 1987年 劇団『美醜』創立メンバー
- 1996-1999年(財)ソウル芸術団ミュージカル監督
- 2007-2012年 青江文化産業大学ミュージカルスクール教授
受賞
- 1987年 - 劇評価グループ最優秀演技賞受賞。劇団美醜の創立公演作品。演劇『守り神』(キム・ジョン役)
- 1988年
- 演出家グループ最優秀演技賞受賞。劇団美醜の第二の演劇『呉将軍の足の爪』(呉将軍役)
- 演劇人が選定した今年の演技者賞受賞
- 1997年 - 第3回韓国ミュージカル大賞助演男優賞を受賞。ミュージカル『パダムパダムパダム』(ポール役)
- 1999年 - 第5回韓国ミュージカル大賞主演男優賞受賞。ミュージカル『Henequen』(ハヌ役)、『男子ナンセンス』(院長修道女役)
- 2006年 - 第12回韓国ミュージカル大賞主演男優賞受賞。ミュージカル『プロデューサーズ』(マックス・ビアリストック役)
- 2014年 - 2014韓国社会を輝かせた大韓民国忠孝大賞受賞(国家無形文化財部門2014康翎タルチュム発展の功労大賞受賞)
主な出演作
テレビドラマ
映画
声の出演
脚注