スコティッシュ・アビエーション ツインパイオニア
SBACショー で展示されるツインパイオニア XM259(1958年9月13日)
スコティッシュ・アビエーション ツインパイオニア (Scottish Aviation Twin Pioneer )は、1950年代 に軍用と民間の双方で使用されることを意図して設計された英国 のスコティッシュ・アビエーション 社で製造されたSTOL 輸送機 である。本機は「30m (99ft)× 275m (902ft)の場所から運用できる」という同様の要求仕様に応じたスコティッシュ・アビエーション パイオニア 小型輸送機を双発化したものである[ 1] 。
設計と開発
ファーンボローのSBACショー で飛行するツインパイオニアの試作機(1955年)
2基のアルヴィス レオニダス 531 (英語版 ) 星型エンジン を装着したツインパイオニアは、固定尾輪式降着装置 と3枚の垂直尾翼 と方向舵 を持つ高翼単葉機であった。登録記号「G-ANTP 」を与えられたツインパイオニアの試作機は、1955年 6月25日にプレストウィック空港 (英語版 ) で初飛行を行った。飛行テストではこの機体の着陸距離が非常に短いものであることが分かり、1955年9月に催された英国航空機製造業者協会 のファーンボロー航空ショー に展示された。
3機の前量産型のツインパイオニアが試験、販売、デモンストレーション用に製造された。
1958年 に第33号機がフィリピン航空 から発注されたプラット・アンド・ホイットニー R-1340 星型エンジンを装着したシリーズ2 の試作機に使用された。改良型のアルヴィス レオニダス 531 星型エンジンを装着したシリーズ3 も開発された。
運用の歴史
軍用機版は爆弾のような外部兵装をスタブウイング下に懸架できた。ツインパイオニアは新しく編成されたマレーシア空軍 の最初の機体となり、FM1062 c/n580と FM c/n581が1962年 1月16日に、FM1064 c/n 583とFM1065 c/n 584がその2日後に納入された。最初の2機はマレーシア空軍第1飛行隊で実働任務に就いた。ツインパイオニアは空軍で12年間就役し、FM1064 c/n 583は現在ムラカ にあるムラカ交通博物館(Muzium Pengangkutan Melaka)に展示されている。
英空軍 が発注した39機は1958年 から1959年 に生産され、アデン と極東に配備された。これらはマレー危機 や後のボルネオ島 での紛争で広範囲に試用された。1959年 にKhormaksar駐留の第78飛行隊 が単発のパイオニア の補充に数機のツインパイオニアを受領し、荒涼地周辺への兵員輸送や物資補給、場合によってはオマーンのサルタン への貸与支援に使用された。同飛行隊は一連の両エンジン停止の問題により同じ日に2機の機体を失った。不適切な緩/急の着陸進入も着陸時の事故原因となった。
エア・アトランティーク のツインパイオニア(エクセター 、1998年)
ツインパイオニアを運用したその他の飛行隊は、バーレーン のムハッラク島 に駐留する第152飛行隊 や1959年 5月にツインパイオニアにより再編成されたベンソン空軍基地 の第21飛行隊 がある。第21飛行隊はその後ケニヤ へ、1965年 6月にはアデンへ移転し、第152飛行隊はペルシャ湾 周辺で活動した。セルター に駐留する第209飛行隊 は1959年にツインパイオニアを受領し始め、これらの機体はボルネオとマレーシア で運用された。オーディハム空軍基地 のSRCU(Short Range Conversion Unit:短距離転換部隊)でも3機を搭乗員の訓練のために使用し、英国内の第230飛行隊 はツインパイオニアを運用した最後の部隊となった。この飛行隊では興味深いことに機体に砂漠地帯用の迷彩塗装を施していた。
軍事運用が主ではあったがツインパイオニアは、通常は整地されていない滑走路といった専用の飛行場が無い地域での民間輸送でも成功を収めた。Rio Tinto FinanceやExploration Limitedといった企業を最初とした油井開発会社向けやオーストリア やスイス 政府の調査部門向けの探索機としても販売された。3機はオランダ領ニューギニア の'Kroonduif '航空で使用された。
1機のツインパイオニアが長期に渡りRAE ファーンボロー の帝国テストパイロット学校 (ETPS)でSTOL訓練機として使用された。2009年 現在、コヴェントリー のエア・アトランティーク がこの機体をETPS時代の塗装を残したままで飛行させている。
派生型
ツインパイオニア :アルヴィス レオニダス 531 (英語版 ) 星型エンジン を装着した試作機、1機製造。
ツインパイオニア シリーズ1 :アルヴィス レオニダス 514 星型エンジンを装着した量産型。
ツインパイオニア CC.Mk 1 :シリーズ1の英空軍向け軍用版、32機製造。
ツインパイオニア CC.Mk 2 :シリーズ1の英空軍向け軍用版、7機製造。
ツインパイオニア シリーズ2 :プラット・アンド・ホイットニー R-1340 星型エンジンを装着した量産型。
ツインパイオニア シリーズ3 :アルヴィス レオニダス 531 星型エンジンを装着した量産型。
運用
民間運用
軍事運用
マレーシア
ネパール
イギリス
事件と事故
要目
ツインパイオニア CC.Mk 1の固定式主脚
(Twin Pioneer CC.Mk 2) Green .[ 3]
乗員:2名
搭載量:兵員13名、又は貨物2,000 lb (907 kg)まで
全長:13.79 m (45 ft 3 in)
全幅:23.32 m (76 ft 6 in)
全高:3.73 m (12 ft 3 in)
翼面積:62 m2 (670 ft2 )
空虚重量:4,564 kg (10,062 lb)
全備重量:6,622 kg (14,600 lb)
最大離陸重量:6,622 kg (14,600 lb)
エンジン:2 × アルヴィス レオニダス 531 (英語版 ) 星型エンジン 、640 hp (564 kW)
最大速度:266 km/h (143 knots, 165 mph)
巡航高度:6,098 m (20,000 ft)
航続距離:1,287 km (695 nm, 791 mi)
上昇率:381 m/min (1,250 ft/min)
関連項目
出典
脚注
参考文献
Green, William. Macdonald Aircraft Handbook . London. Macdonald & Co. (Publishers) Ltd., 1964.
Donald, David, ed. The Encyclopedia of World Aircraft . London: Aerospace Publishing, 1997. ISBN 1-85605-375-X .
Thetford, Owen. Aircraft of the Royal Air Force 1918-57 , 1st edition. London: Putnam, 1957.
外部リンク