シギウナギ科
Labichthys carinatus
分類
英名
Snipe eels
下位分類
本文参照
シギウナギ科 (学名 :Nemichthyidae )は、ウナギ目 に所属する魚類 の分類群(科 )の一つ。シギウナギ など漂泳性の深海魚 のみ、3属9種が含まれる[ 1] 。科名(模式属 名)の由来は、ギリシア語 の「nema(糸状)」および「ichthys(魚)」から[ 2] 。
分布・生態
シギウナギ科の魚類は太平洋 ・大西洋 ・インド洋 など、世界中の温暖な海域に広く分布する[ 1] 。水深2,000mまでの深海 を主な生息範囲とし、海底 から離れた中層を漂って生活する漂泳性深海魚のグループである[ 3] 。日本近海からは2属3種が報告されている[ 4] 。
食性 は肉食性 で、サクラエビ など浮遊性の甲殻類 を主に捕食する[ 5] 。特徴的な反り返った口には多くの微細な歯が並び、獲物の体を絡め取るように捕獲すると考えられている[ 5] 。水深300m以深で体を垂直にして漂い、餌を探索する姿が報告されている[ 1] 。
カライワシ上目 の仲間に共通する特徴として、仔魚 はレプトケファルス (葉形仔魚)と呼ばれる独特の形態をとる。シギウナギ科魚類のレプトケファルスは細長い糸状の尾部をもち、他科との鑑別は容易である[ 3] 。
形態
シギウナギ Nemichthys scolopaceus (シギウナギ属)。反り返った細長い顎が本科魚類の特徴である
体型は非常に細長く、最大で全長1.6mに達する[ 2] 。著しく伸びた上下の顎が本科魚類の最大の特徴で、互いに反り返った両顎は咬み合わせることはできない[ 1] 。上顎は下顎よりわずかに長い[ 1] 。眼が大きく、側線 はよく発達する[ 1] 。肛門 はクロシギウナギ属では胸鰭の後方に、他2属では胸鰭直下に位置する[ 1] 。
雄は性成熟 とともに顎が短くなり歯は消失するなど、大きな形態学 的変化が生じる[ 1] 。このため、かつては同一種の雄と雌が、異なる属 あるいは別の亜目 として分類されていたこともある[ 1] 。成熟雄は鼻孔 が拡大しており、雌のフェロモン を敏感に捉えるための変化と推測されている[ 6] 。
背鰭 と臀鰭の基底は非常に長く、尾鰭と連続する[ 1] 。シギウナギ属には、ごく細いフィラメント状の尾鰭が存在する[ 1] 。前鰓蓋骨を欠き、前頭骨 は一部のみ癒合する[ 1] 。椎骨 はクロシギウナギ属および Labichthys 属では170-220個だが、シギウナギ属では750個を超えることもある[ 1] 。
分類
シギウナギ科にはNelson(2016)の体系において、3属9種が認められている[ 1] 。本科はかつてアナゴ科 ・ハモ科 を含めたアナゴ亜目 の一員として位置付けられていたが[ 7] 、ミトコンドリアDNA 全長の塩基配列 解析により、本科はフウセンウナギ の仲間から派生し、ノコバウナギ科 およびウナギ科 と近縁であることが明らかにされた[ 8] [ 9] 。
クロシギウナギ Avocettina infans (クロシギウナギ属)。本種は水深4,571mからの記録がある[ 10]
出典・脚注
^ a b c d e f g h i j k l m n 『Fishes of the World Fifth Edition』 p.151
^ a b “Nemichthyidae ”. FishBase. 2016年5月28日 閲覧。
^ a b 『海の動物百科2 魚類I』 p.36
^ 『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』 pp.290,1808
^ a b 『Deep-Sea Fishes』 p.156
^ 『Deep-Sea Fishes』 p.55
^ 『Fishes of the World Fourth Edition』 p.122
^ Inoue JG, Miya M, Miller MJ, Sado T, Hanel R, Hatooka K, Aoyama J, Minegishi Y, Nishida M, Tsukamoto K (2010). “Deep-ocean origin of the freshwater eels”. Biol Lett 6 (3): 363-366.
^ “ウナギの進化的起源は深海に! ”. 東京大学大気海洋研究所 . 2016年5月28日 閲覧。
^ 『日本の海水魚』 p.90
参考文献
ウィキメディア・コモンズには、
シギウナギ科 に関連するメディアがあります。
外部リンク