|
この項目では、イタリアの自治体の最小単位について説明しています。スイスの基礎自治体については「スイスの基礎自治体」をご覧ください。 |
コムーネ(伊: comune)は、イタリア語で「共同体」の意味を指す用語であり、現代ではイタリアの自治体の最小単位の組織(基礎自治体)である。また、スイスのイタリア語圏でも基礎自治体をコムーネと呼ぶ(詳細はスイスの基礎自治体を参照)。
解説
イタリアの自治体には、日本の市町村のような規模による区別はない。人口200万人を超えるローマのような都市も、バローロのような1,000人以下の村もすべて「コムーネ」である(ただし、「都市」の称号を名乗ることが認められるコムーネがある)。そのため日本語に訳す場合には「ローマ」や「バローロ村」のように日本の自治体の規模に合わせて翻訳される。この点はフランスのコミューンと同様である。コムーネの代表(首長)は、シンダコ(sindaco)と呼ばれる。
2011年10月9日時点のイタリアのコムーネの数は、イタリア国立統計研究所によると8,092である[1]。21世紀に入って以降、コムーネの統廃合(イタリア語版)が進められている。日本(面積はイタリアの約1.25倍)と比べれば昭和の大合併以前の市町村数(約1万)と比肩しうる[2]。
中世・近世の西洋史の研究では、イタリア中部・イタリア北部地域に存在した自治都市の都市共同体が存在して、コムーネと呼ばれた。自治都市コムーネは都市の有力市民、地区やギルドの代表によって運営され、都市とその郊外農村地域を統治していた。現代イタリアのコムーネ自治は自治都市の伝統を基礎としているといわれる。
中世におけるコムーネ
成立要素
イタリアの中世都市はその大部分がローマ都市を起源としており、大多数の都市には地中海商業(ただし、古代のものと中世のそれは異なる。詳しくは後述)が伝統としてあった。しかし中世初期のそれがビザンティウム中心の東地中海の商業網と地中海の南岸及び西地中海を覆うイスラム商業網があったが、時代が進むにつれて商業の動脈が内陸へと移って行った。10世紀にアマルフィ、パレルモ、ヴェネツィアは商業圏の発展に伴って成長した。このようにして都市には経済的中心地としての機能が備わり、これには帝国崩壊後の支配者たちも着目した。やがて都市は城砦を持つ中心地となった。これらの中世都市の中枢機関が過去のローマ市内の範囲であり、都市発展の連続性が暗示されている。また支配者が頻繁に変わったにもかかわらず司教とその信徒の関係性に大きな変化が起きなかったため、9世紀から10世紀のイタリアでは、特に東方のマジャール人と南方のイスラーム勢力から身を守るために司教の周りに人々が集結し、司教は精神だけではなく都市の秩序を守る存在となった。
コムーネの成立には教会の権威が権力者の没落により上昇し、銀貨の品位が司教によって決められるようになった。また、司教権力の増大で都市市民の発言力が増大した。コムーネが出てきたのは11世紀末から12世紀初期で、平和団体であったものが恒常的統治機関となり、その際農村、都市に社会的変容を齎した民衆的宗教運動が重要な役割を果たした。特に積極的に動いたのが商人的市民と周辺の土地所有者層であった。領有国家の概念としてコムーネの発展に重要であったのが「コンタード」という概念で、伯の支配領域という意味であったが、これは伯にとっての伯領と同様都市コムーネにとっても司教区の範囲は支配下に入るという考え方である。
コムーネの規模による一覧
人口
2011年時点の統計データに基づく、人口上位20位のコムーネは以下の通り[3](it:Comuni d'Italia per popolazioneも参照)。
|
コムーネ
|
州
|
県
|
人口
|
1 |
ローマ |
ラツィオ州 |
ローマ県 |
2,617,175
|
2 |
ミラノ |
ロンバルディア州 |
ミラノ県 |
1,242,123
|
3 |
ナポリ |
カンパニア州 |
ナポリ県 |
962,003
|
4 |
トリノ |
ピエモンテ州 |
トリノ県 |
872,367
|
5 |
パレルモ |
シチリア州 |
パレルモ県 |
657,561
|
6 |
ジェノヴァ |
リグーリア州 |
ジェノヴァ県 |
586,180
|
7 |
ボローニャ |
エミリア=ロマーニャ州 |
ボローニャ県 |
371,337
|
8 |
フィレンツェ |
トスカーナ州 |
フィレンツェ県 |
358,079
|
9 |
バーリ |
プッリャ州 |
バーリ県 |
315,933
|
10 |
カターニア |
シチリア州 |
カターニア県 |
293,902
|
11 |
ヴェネツィア |
ヴェネト州 |
ヴェネツィア県 |
261,362
|
12 |
ヴェローナ |
ヴェネト州 |
ヴェローナ県 |
252,520
|
13 |
メッシーナ |
シチリア州 |
メッシーナ県 |
243,262
|
14 |
パドヴァ |
ヴェネト州 |
パドヴァ県 |
206,192
|
15 |
トリエステ |
フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州 |
トリエステ県 |
202,123
|
16 |
ターラント |
プッリャ州 |
ターラント県 |
200,154
|
17 |
ブレシア |
ロンバルディア州 |
ブレシア県 |
189,902
|
18 |
プラート |
トスカーナ州 |
プラート県 |
185,456
|
19 |
レッジョ・ディ・カラブリア |
カラブリア州 |
レッジョ・カラブリア県 |
180,817
|
20 |
モデナ |
エミリア=ロマーニャ州 |
モデナ県 |
179,149
|
同データに基づく、人口下位10位は以下の通り[3](it:Ultimi 100 comuni italiani per popolazioneも参照)。
面積
2011年時点の統計データに基づく、面積上位20位のコムーネは以下の通り[3](it:Primi 100 comuni italiani per superficieも参照)。
同データに基づく、面積下位10位は以下の通り[3](it:Ultimi 100 comuni italiani per superficieも参照)。
人口密度
2011年時点の統計データに基づく、人口密度上位20位のコムーネは以下の通り[3]。
|
コムーネ
|
州
|
県
|
人口密度 人/km2
|
1 |
カザヴァトーレ |
カンパニア州 |
ナポリ県 |
12,224.41
|
2 |
ポルティチ |
カンパニア州 |
ナポリ県 |
12,109.93
|
3 |
サン・ジョルジョ・ア・クレマーノ |
カンパニア州 |
ナポリ県 |
11,088.57
|
4 |
メリート・ディ・ナーポリ |
カンパニア州 |
ナポリ県 |
9,688.36
|
5 |
ナポリ |
カンパニア州 |
ナポリ県 |
8,082.48
|
6 |
フラッタミノーレ |
カンパニア州 |
ナポリ県 |
7,660.57
|
7 |
ブレッソ |
ロンバルディア州 |
ミラノ県 |
7,601.70
|
8 |
アルツァーノ |
カンパニア州 |
ナポリ県 |
7,422.76
|
9 |
アトラーニ |
カンパニア州 |
サレルノ県 |
7,354.89
|
10 |
カルディート |
カンパニア州 |
ナポリ県 |
6,957.58
|
11 |
ミラノ |
ロンバルディア州 |
ミラノ県 |
6,837.15
|
12 |
トリノ |
ピエモンテ州 |
トリノ県 |
6,709.94
|
13 |
ムニャーノ・ディ・ナーポリ |
カンパニア州 |
ナポリ県 |
6,575.70
|
14 |
セスト・サン・ジョヴァンニ |
ロンバルディア州 |
ミラノ県 |
6,540.05
|
15 |
カゾーリア |
カンパニア州 |
ナポリ県 |
6,483.25
|
16 |
コルシコ |
ロンバルディア州 |
ミラノ県 |
6,284.70
|
17 |
グルーモ・ネヴァーノ |
カンパニア州 |
ナポリ県 |
6,255.25
|
18 |
カザルヌオーヴォ・ディ・ナーポリ |
カンパニア州 |
ナポリ県 |
6,205.77
|
19 |
クザーノ・ミラニーノ |
ロンバルディア州 |
ミラノ県 |
6,134.40
|
20 |
アヴェルサ |
カンパニア州 |
カゼルタ県 |
5,970.44
|
同データに基づく、人口密度下位10位は以下の通り[3]。
脚注
参考文献
- 淸水廣一郎『イタリア中世の都市社会』岩波書店、1990年。
関連項目