クルト・レヴィン (Kurt Zadek Lewin, 1890年 9月9日 - 1947年 2月12日 )は、ドイツ 出身の心理学者 。専門は社会心理学 、産業・組織心理学 、応用心理学 。ドイツ 領だったポーゼン州 モギルノ (ポーランド語版 ) 出身でユダヤ系 。
「ツァイガルニク効果 」の研究や「境界人 」の概念の提唱で知られる。
モギルノにあるクルト・レヴィンのレリーフ
人物
ゲシュタルト心理学 を社会心理学 に応用しトポロジー心理学 を提唱した。ベルリン大学の哲学と心理学の教授を務めていたが、ナチ党の権力掌握 で、ユダヤ人の学者は大学から追放された。海外に出ていた彼は、1933年8月にアメリカ に亡命し、1940年にアメリカの市民権を取得した。コーネル大学 教授をつとめ、マサチューセッツ工科大学 (MIT)にグループダイナミクス(集団力学)研究所を創設した。「社会心理学の父」と呼ばれ、アイオワ大学の博士課程でレオン・フェスティンガー などを指導した。リーダーシップスタイル(専制型、民主型、放任型)とその影響の研究、集団での意思決定の研究、場の理論や変革マネジメントの「解凍―変化―再凍結」モデルの考案、「アクション・リサーチ 」という研究方式、グループダイナミクスによる訓練方法 (特にTグループ)など、その業績は多方面にわたる。1947年、マサチューセッツ州 ニュートンビル で死去。
生涯
1890年 、プロイセン王国 ポーゼン州 (英語版 ) モギルノ (英語版 ) でユダヤ系の中流家庭に4番目の子として生まれる。当時人口5,000人ほどの小さな村であったが、ユダヤ人は約150人ほどだった[ 1] 。クルトの父・レオポルドは雑貨店を経営しており、家族はその店の上階に住んでいた。1905年 、家族はベルリン に移住した。クルトは1908年 にかけてベルリンのシャルロッテンブルク (英語版 ) にあるギムナジウム ・en:Kaiserin Augusta Gymnasium で学んだ[ 1] 。
1909年 、アルベルト・ルートヴィヒ大学フライブルク (フライブルク大学)に入学し、医学 を専攻したものの、生物学 を学ぶためルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン (ミュンヘン大学)に転学し、社会主義 運動と女性の権利 運動に関わるようになる[ 2] 。1910年 4月にはフンボルト大学ベルリン (ベルリン大学)に転学した。当時は医学生だったものの、興味は哲学 と心理学に移っており、講義はほとんど心理学のコースを受講していた。ベルリンではカール・シュトゥンプ の講義も受講していた[ 1] 。第一次世界大戦 に従軍したのち、ベルリンに戻り、シュトゥンプの元で博士論文を完成させた。
ベルリン時代にはフランクフルト学派 との関わりが強く、マックス・ヴェルトハイマー 、ヴォルフガング・ケーラー らと共に研究を行った。1926年 から1933年 にかけてベルリン大学教授として緊張 、欲求 、動機づけ 、学習 について実験を行った[ 3] 。1933年 に国家社会主義ドイツ労働者党 が政権を獲得し、アドルフ・ヒトラー 内閣が成立するとホロコースト から逃れるためにイギリス経由でアメリカに移住した。ロンドン ではタビストック・クリニック の創設者のひとりであるエリック・トリスト (英語版 ) と会っている。
レヴィンは1933年8月にアメリカに移住し、1940年 にアメリカ国籍 を取得。移住後はコーネル大学 、アイオワ大学 で研究をつづけた後、マサチューセッツ工科大学 の集団力学 センターのトップに就任した。
1947年 2月、マサチューセッツ州 ニュートンビルで心臓発作 によって死去。
脚注
^ a b c Lewin, Miriam (1992). “The Impact of Kurt Lewin's Life on the Place of Social Issues in His Work”. Journal of Social Issues 48 (2): 15–29. doi :10.1111/j.1540-4560.1992.tb00880.x .
^ Smith, MK. "Kurt Lewin, groups, experiential learning and action research" . The Encyclopedia of Informal Education . 2010年8月16日閲覧 。
^ Bargal, David (1998). “Kurt Lewin and the First Attempts to Establish a Department of Psychology at the Hebrew University”. Minerva: A Review of Science, Learning and Policy 36 (1): 49–68. doi :10.1023/a:1004334520382 . PMID 11620064 .