ギル・ロバーツ(Gil Roberts、1989年3月15日 ‐ )は、アメリカ合衆国・オクラホマシティ出身の陸上競技選手。専門は短距離走。400mで44秒22の自己ベストを持つ。2016年リオデジャネイロオリンピック男子4×400mリレーの金メダリストである。競技生活の大半をハムストリングスの怪我に悩まされている[1]。
経歴
ミルウッド高校 (en) 時代には、2006-2007年シーズンにアメリカンフットボールと陸上競技でオクラホマ州選手権に出場。卒業するまでにナイキ選手権(Nike Outdoor Nationals)を含む5つの全国タイトルを獲得するなど活躍し、卒業後はテキサス工科大学に進学した[2]。しかし、1年時は怪我でほとんどレースに出場できずに終わった[3]。
2009年
3月のNCAA室内選手権男子400mでは優勝したマイケル・ビンガム(英語版)(45秒69)に0秒02及ばず、初のNCAAタイトルを惜しくも逃した[4]。5月のBig 12選手権では男子400mを今季世界ランク4位(当時)の記録となる44秒86で制し[5]、初のNCAAタイトルを目指して6月のNCAA選手権に出場したが、男子400m準決勝で負傷し途中棄権に終わった。同月の全米選手権男子400mは決勝まで進出し、ラショーン・メリット(44秒50)に次ぐ44秒93で2位に入りベルリン世界選手権アメリカ代表の座を掴んだ[6]。世界大会初出場となった8月のベルリン世界選手権男子400mは46秒41で予選敗退に終わった。
2011年
3月のNCAA室内選手権は男子400mに出場するも不正スタートで予選失格に終わった。6月のNCAA選手権男子400m決勝はキラニ・ジェームスとの同タイム(45秒10)着差ありの優勝争いに0秒003差で敗れ、更にレーン侵害があったとして失格に終わった[7]。
2012年
2月に室内400mで今季世界最高記録(当時)および自己ベストとなる45秒39をマークすると、同月の全米室内選手権男子400m決勝でも45秒39をマークし、カルヴィン・スミス・ジュニア(45秒96)らを抑えて初優勝を成し遂げた[8]。3月のイスタンブール世界室内選手権には400m今季世界ランキング2位(当時)の記録(45秒39)を持って臨んだが、400mは準決勝敗退に終わった。しかし、決勝のみ出場した4×400mリレーではアメリカチームのアンカーを務めて優勝に貢献し、自身初となる世界大会のメダルを獲得した[注 1][9]。6月上旬のNCAA選手権は男子400m準決勝を44秒84の自己ベスト(当時)で突破したが、決勝では44秒99とタイムを落として3位に終わり、卒業するまでにNCAAタイトルを獲得することはできなかった。同月下旬の全米選手権男子400mは準決勝で敗退した[10]。
2013年
6月の全米選手権男子200mで準決勝まで進出したが、わずか0秒007差で決勝進出を逃した[11]。
2014年
6月の全米選手権男子400mは予選45秒16、準決勝44秒99と、両ラウンドで全体1位のタイムをマークすると、迎えた決勝は44秒53の自己ベスト(当時)をマークし、ジョシュア・マンス(英語版)(44秒89)やカイル・クレモンズ(45秒00)などを抑え、2年ぶり2度目となるシニアの全米タイトルを獲得した[12]。
2015年
6月の全米選手権男子400mは46秒02で予選敗退に終わった[13]。
2016年
初のオリンピックアメリカ代表を目指して7月の全米選手権男子400mに出場すると、準決勝では当初不正スタートの判定が下ったが、抗議の末に判定が覆り、準決勝を全体2位となる44秒67で突破。決勝はタイムは落としたものの2ラウンド連続の44秒台となる44秒73をマークし、ラショーン・メリット(43秒97)に次ぐ2位に入り初のオリンピック代表の座を掴んだ[14][15]。8月のリオデジャネイロオリンピックには男子400mと4×400mリレーに出場すると、400mは準決勝で自己ベスト(44秒53)に迫る44秒65をマークするも全体9位に終わり、決勝に進出するには0秒16及ばなかった[16]。しかし、決勝のみ出場した4×400mリレーはアメリカチームの3走を務めて金メダル獲得に貢献した[注 2][17]。
2017年
6月23日の全米選手権男子400m準決勝で自己ベスト(44秒53)を3年ぶりに更新する44秒33をマークすると、翌日の決勝でも44秒22の自己ベストをマークして2位に入り、ロンドン世界選手権アメリカ代表の座を掴んだ[18]。2009年ベルリン大会以来8年ぶりの出場となった8月のロンドン世界選手権男子400mには今季世界ランク5位(44秒22)として臨むと[19]、予選を44秒92で突破し、8年前には進めなかった準決勝に進出した。準決勝では予選よりタイムを縮める44秒84をマークしたが、着順で決勝に進出できる組2着には0秒29、タイムで拾われるには0秒20届かず、組3着(全体10位)で敗退した[20]。決勝のみ出場した男子4×400mリレーはアメリカチームの2走を務めて銀メダル獲得に貢献し、自身初の世界選手権メダルは獲得したが、アメリカチームは大会7連覇を逃した[注 3][21]。
人物・エピソード
2017年3月24日のドーピング検査で陽性反応を示したが、恋人とのキスが原因だったため潔白となった。恋人が禁止薬物(プロベネシド)の含まれている鼻炎薬を摂取しており、熱いキスを頻繁に繰り返すうちにロバーツが禁止薬物を取り込んでしまったという[22]。
自己ベスト
記録欄の( )内の数字は風速(m/s)で、+は追い風を意味する。
種目 |
記録 |
年月日 |
場所 |
備考
|
屋外
|
100m |
10秒12 (+1.0) |
2014年5月3日 |
ラボック |
|
9秒92w (+5.0)[23] |
2014年5月31日 |
クレアモント |
追い風参考記録
|
200m |
20秒22 (+0.6) |
2014年6月14日 |
チュラビスタ |
|
300m |
31秒81 |
2016年6月11日 |
キングストン |
|
400m |
44秒22 |
2017年6月24日 |
サクラメント |
|
室内
|
200m |
20秒58 |
2012年2月10日 |
アルバカーキ |
|
400m |
45秒39 |
2012年2月10日 2012年2月26日 |
アルバカーキ |
|
主要大会成績
備考欄の記録は当時のもの
年
|
大会
|
場所
|
種目
|
結果
|
記録
|
備考
|
2009
|
世界選手権
|
ベルリン
|
400m
|
予選5組5着
|
46秒41
|
全体32位
|
2012
|
世界室内選手権
|
イスタンブール
|
400m
|
準決勝1組4着
|
47秒01
|
全体11位
|
4x400mR
|
優勝
|
3分03秒94 (4走)
|
今季アメリカ最高記録
|
2016
|
オリンピック
|
リオデジャネイロ
|
400m
|
準決勝3組4着
|
44秒65
|
全体9位
|
4x400mR
|
優勝
|
2分57秒30 (3走)
|
今季アメリカ最高記録
|
2017
|
世界選手権
|
ロンドン
|
400m
|
準決勝3組3着
|
44秒84
|
|
4x400mR
|
2位
|
2分58秒61 (2走)
|
今季アメリカ最高記録
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全米選手権
優勝した全米選手権・全米室内選手権 (en) を記載
年
|
大会
|
場所
|
種目
|
記録
|
備考
|
2012
|
全米室内選手権
|
アルバカーキ
|
400m
|
45秒39
|
|
2014
|
全米選手権
|
サクラメント
|
400m
|
44秒53
|
自己ベスト
|
脚注
注釈
出典
外部リンク