カーゼルーン(ペルシア語: کازرون、Kāzerūn[2]/Kāzeroūn/Kazeroon/Kasrun)
[3]とは、イランのファールス州カーゼルーン郡の都市で郡中心市に定められている。[2]2016年当時の人口は96,683人。都市の農産物はナツメヤシ、柑橘類の果樹園、小麦、タバコ、米、綿花、ブドウがある。伝統工芸品のギーヴェ(綿布で作られた靴)やドゥールチェ(手桶)の産地としても知られている。
カーゼルーンから19km北の地点には古代都市ビシャープールの遺跡があり、サーサーン朝時代の浅浮彫が残されている。[2]遺跡内のシャープール洞窟にはシャープール1世(在位:241年 - 272年)の像が建てられている。カーゼルーンは多くの知識人を輩出したことでも知られ、出身者として預言者ムハンマドのサハーバ(教友)であるサルマーン・アル=ファーリスィーなどの人物が挙げられる。[4]ガージャール朝の時代には多くの人々がカーゼルーンからバーレーンに移住し、カーゼルーニーという姓を持つバーレーン人が多い。
歴史
サーサーン朝の君主ペーローズ1世(在位:459年 - 484年)の治世に3つの村が一つにまとめられ、カーゼルーンの元となる町が作られた。[4]元々の名称は「バラドアティーグ」だったが、10世紀以降はカーゼルーンの名前で呼ばれるようになった。[5]ウマイヤ朝の時代にはカーゼルーンとビシャープール(英語版)で貨幣の鋳造が行われ、アッバース朝期からカーゼルーンは造幣で知られるようになった。[4]10世紀末までにサーサーン朝時代の主要都市だったビシャープールが衰退すると、ビシャープールに代わってカーゼルーンがファールス地方の有力都市の一つになる。当時のカーゼルーンは商業活動が活発であり、立派な家屋が立ち並んでいた。良好な立地と気候、交易活動のため、ファールス地方が不安定な情勢にある中でもカーゼルーンは平穏を保っていた。[4]
1101年から1102年にかけてアブー・サイード・シャバーンカーライーによってカーゼルーンと周辺の都市が破壊され、荒廃したビシャープールに代わってカーゼルーンが地域の中心都市となった。[4]12世紀に始まったモンゴル帝国のペルシア征服事業において、カーゼルーンとファールス地方は初期の軍事活動で行われた大規模な破壊・虐殺は免れたものの、13世紀末からカーゼルーンはニクダリヤンの攻撃にしばしば晒され、ムザッファル朝の君主シャー・シュジャー死後の内乱で町は破壊された。[4]
ティムール朝と黒羊朝の抗争の中でカーゼルーンは破壊を免れるが、サファヴィー朝の創始者イスマーイール1世はカーゼルーンのスンナ派の人間に強い圧力をかけ、彼の命令によってスンナ派の説教師とその家族が殺害され、スンナ派の聖者の墓廟が破壊された。[4]1591年にアッバース1世はアフシャール家のホージャ・ピール・ボダーグをカーゼルーンの総督に任命し、その後およそ250年の間アフシャール家出身の総督がカーゼルーンを統治した。サファヴィー朝末期からヨーロッパの旅行者がカーゼルーンを訪れるようになり、彼らは町の寂れた様子、彫像が置かれたシャープール洞窟などの近郊の遺跡の素晴らしさを書き残した。[4]
気候
カーゼルーンは気温が高いステップ気候である。(ケッペンの気候区分でBShに分類される。)
カーゼルーンの気候
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月 |
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
年
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平均最高気温 °C (°F)
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14.6 (58.3)
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15.4 (59.7)
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17.1 (62.8)
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19.4 (66.9)
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26.0 (78.8)
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33.0 (91.4)
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39.3 (102.7)
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41.3 (106.3)
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40.0 (104)
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35.7 (96.3)
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30.4 (86.7)
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24.5 (76.1)
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28.06 (82.5)
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平均最低気温 °C (°F)
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4.0 (39.2)
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4.5 (40.1)
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4.9 (40.8)
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7.2 (45)
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12.4 (54.3)
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18.7 (65.7)
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26.0 (78.8)
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27.4 (81.3)
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24.9 (76.8)
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20.9 (69.6)
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17.1 (62.8)
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13.5 (56.3)
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15.13 (59.22)
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雨量 mm (inch)
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53 (2.09)
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62 (2.44)
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45 (1.77)
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6 (0.24)
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0 (0)
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0 (0)
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0 (0)
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0 (0)
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1 (0.04)
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12 (0.47)
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28 (1.1)
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50 (1.97)
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257 (10.12)
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出典:Climate-data.org
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脚注
参考文献
- 鈴木均「カーゼルーン」『世界地名大事典』第3巻、朝倉書店、2012年、238頁。
- “KAZERUN ii. History”. Encyclopaedia Iranica. 2023年8月閲覧。