「カイク」という語の発祥の地の1つとされるエリス島
カイク (Kike )とはユダヤ人 を指す蔑称 であり、アメリカ 生まれの口語 表現[ 1] である。
語源
語の起源は不明。オックスフォード英語辞典 によると、20世紀 初頭にアメリカ合衆国へ移住した東欧 系ユダヤ人(アシュケナジム )の名字 の末尾によく見られる、「キ」(ki )ないしは「キー」(ky )を改変したものという[ 2] 。なお、同辞書における初出は1904年 [ 2] [ 3] 。
一方、スティーブン・バーミンガム の著書『我らの仲間』の一節に、「ロシア(ユダヤ)人の名前は『キ(ki )』で終わるものが多いため、『カイク』(kikes )と呼ばれた。これはユダヤ系ドイツ人 が口語として広めているが、その後非ユダヤ人の間にも浸透した」とあり、アシュケナジムと同一視するために、ドイツ 出身の同化 ユダヤ人が用いたとの説を提示。
また、レオ・ロステン は次のように述べている。
カイクという語は、読み書きの出来ない(ないしは
ラテン アルファベット が書けない)ユダヤ系
移民 が存在した時期の
エリス島 で生まれた。これは、申込用紙に慣例で「
X 」と署名するよう求められた際、
キリスト教 の
十字架 を連想するとして拒否し、その欄に丸を描いたためである。
イディッシュ語 で「丸」を「カイクル」(
kikel )と、「小さな丸」を「カイクルー」(
kikeleh )と言い、移民調査官が「X」と書くべき所に「O」と記入した者は誰でも、「カイクル」や「カイクルー」、あるいは「カイキー」(
kikee )、遂には簡潔に「カイク」と呼ぶようになった。
[ 4]
ロステンによると、アメリカのユダヤ系商人 が数十年にわたり、「X」と書くべき所に「O」と記入し続け、結果として「カイク」という渾名 が広まったという。
その他、16世紀 のクレメンス8世 の時代にまで遡る説も存在する。クレメンス8世は反ユダヤ主義 的立場から、就中タルムード を禁書 としたが[ 5] 、その中にユダヤ人の「盲目的な(ラテン語 :caeca 『カエカ』)頑固さ」に言及している箇所があり、この「カエカ」が最終的に「カイク」となったとしている。
なお、こうした謎めいた起源とは別に、1864年 にイギリス で「アイク」(ike )や「アイキー」(ikey )が、ユダヤ人を指す語として用いられた。いずれもユダヤ人の名前によくある、イサーク (Isaac )に由来する[ 6] [ 7] 。
いずれにせよ、「カイク」なる語はドイツユダヤ系アメリカ人 がユダヤ系ロシア人 移民を表象するために初めて用い、1880年代 のアメリカで発展を遂げることとなった。
現代のアメリカではユダヤ人に対する極めて侮辱を込めた表現と見なされており、NBA選手のマイヤーズ・レナード は2021年3月9日、Twitchでゲーム配信をしている最中に「カイク」と発言してしまい、即座に謝罪したものの、所属チームのマイアミ・ヒート から追放された[ 8] 。
使用例
ユダヤ人を侮蔑する意図のみならず、「鼻 が大きければカイクかもしれない」[ 9] などと、ユダヤ人に有りがちな特徴を持つ人間を表すのに使用されるケースがある。
脚注
^ Thomas Friedmann "Heard Any Good Jews Lately? " pg 260 in Counterbalance: gendered perspectives for writing and language Carolyn Logan, ed.
^ a b "kike, adj." The Oxford English Dictionary . 2nd ed. 1989. OED Online . Oxford University Press. Accessed 15 Dec. 2009 [1]
^ Kim Pearson's Rhetoric of Race by Eric Wolarsky. The College of New Jersey.
^ Leo Rosten: The Joys of Yiddish , cited in Kim Pearson's Rhetoric of Race by Eric Wolarsky. The College of New Jersey.
^ S. Wendehorst, "Katholische Kirche und Juden in der Frühen Neuzeit" 1.3 "Zensur des Talmud", following Willchad Paul Eckert, "Catholizmus zwischen 1580 und 1848" in Karl Heinrich Rengstorf and Siegfried Kortzfleisch, eds. Kirche und Sinagoge II (Stuttgart, 1970) p. 232.
^ New Dictionary of American Slang/ edited by Robert L. Chapman. New York: Harper & Crow. c1986
^ Encyclopedia of Swearing: Social History of Oaths, Profanity, Foul Lanugage, and Ethnic Slurs in the English Speaking World/ Geoffrey Hughes. Armonk, N.Y. : M.E. Sharpe, c2006
^ 人種差別発言をきっかけに転落したマイナーズ・レナードがバックスと10日間契約を結ぶ [2]
^ [3]
関連項目