『エマ』(Emma)は、ジェイン・オースティンの長編小説。1814年1月21日に起稿し、翌年3月29日に完成、12月に刊行された。
恋愛の橋渡しを気取るエマが、紳士的男性ナイトリーによって自らを見つめ直し、成長し結婚するまでを描いた恋愛小説。『高慢と偏見』と並ぶオースティンの代表作とされており、当時の摂政王太子であったジョージ4世に献呈された。
あらすじ
エマ・ウッドハウスは美しく、機知に富む女性である。母が亡くなり姉が結婚して家を出て行った後、父と2人で暮らしている。
ウッドハウス家の家庭教師を16年務めたアナ・テーラーは、ウェストンに嫁いだ。ウェストン氏にテーラーを紹介したのはエマで、自らが恋の仲介役であることを知る。するとエマは、年下の友人であるハリエット・スミスを牧師のエルトンと結び付けようとするが、エルトンが結婚しようとしているのが自分だと知り、この計画は失敗する。
ウェストンの前妻との子であるフランク・チャーチル、ウッドハウス家の隣人ベイツの姪であるジェーン・フェアファクスが登場する。チャーチルには好感を持ったエマだったが、ジェーンとは馬が合わない。エマは、今度はチャーチルとハリエットをくっつけようとするが、エマがミス・ベイツを侮辱してしまったためにナイトリーにたしなめられ、自らの欠点を認識する。
ハリエットは当初エマの意見で結婚を拒絶したロバート・マーティンと結ばれ、エマはナイトリーと結婚する。
主な登場人物
- エマ・ウッドハウス
- 美しく機知に富むが自信過剰気味で気の強い女性。南イングランドのハイベリー村の裕福な家の娘。21歳。
- ヘンリー・ウッドハウス
- ハートフォードの住人。エマの父。すきま風と消化不良を恐れる気鬱症の老人。
- ジョージ・ナイトリー
- ドンウェルの住人。エマに意見できる唯一の人物。
- ハリエット・スミス
- エマの年下の友人。初心な娘でエマを崇拝している。エマのために何度も結婚をさせられそうになる。
- アナ・テーラー
- ウッドハウス家の家庭教師を16年間務める。小説の冒頭でウェストンと結婚。
- ジェーン・フェアファクス
- ベイツ夫人の孫。早くに両親を亡くす。知的だが心の扉が堅い。キャンベル家で第二の娘のように育てられるが、そろそろ自立しなければならない。
- ベイツ夫人
- ハイベリー教区の元牧師の未亡人。耳が遠く、夫の死後貧しい境遇を余儀なくされている。
- ミス・ベイツ
- ベイツ夫人の娘。天真爛漫のおしゃべり。ジェーンの伯母。
- キャンベル大佐
- 戦死したフェアファクス中尉の戦友、遺児のジェーンを引き取る。
- ディクソン夫人
- キャンベル大佐のひとり娘。新婚。
- ウェストン氏
- ランドルーズの住人。ミス・チャーチルと結婚するも3年で死別、アナ・テーラーと再婚。
- フランク・チャーチル
- ウェストンと前妻との間の子。裕福な母方の伯父伯母に溺愛され遠方で育てられる。
- イザベラ・ナイトリー
- エマの姉。ジョージ・ナイトリーの弟ジョンと結婚、6歳の長男ヘンリーを頭に5人の子持ち。
- フィリップ・エルトン
- ハイベリーの新しい牧師。エマの仲介熱の最初の犠牲者、本命のエマにふられてからすぐにオーガスタ・ホーキンズと結婚する。
- オーガスタ・エルトン
- エルトン夫人。傍若無人のお節介屋。
- ロバート・マーティン
- 農夫。ハリエットに求婚するが、あっさり断られる。
- フォード夫妻
- ハイベリー村の衣料品店主。
- ゴダード夫人
- ハリエットが通う女学校の校長。
- コール夫妻
- 事業が成功して今や上流の人々との交際を望んでいる。
- ペリー氏
- ウッドハウス氏の友人で医師。
作品解説
主人公エマ・ウッドハウスを、作者オースティン自身は「私のほかには誰も好きになれそうにない女主人公」としている。
日本語訳
映像化作品
漫画化作品
外部リンク