ウラル [ 1]
航行中のウラル(1989年)
艦歴
起工
1981年6月25日
進水
1983年5月1日
就役
1989年1月7日
退役
2001年
退役後
核燃料を撤去。解体
要目
艦種
情報収集艦
排水量
基準排水量
32,780t
満載排水量
36,500t
全長
265m
全幅
30m
全高
70m
吃水
7.5m
機関[ 2]
二軸推進、140,000shp
OK-900A加圧水型原子炉 2基
171Mw ×2
VDRK-500ボイラー 2缶
GT3A-688蒸気タービン 2基
速力
21.6kt
航行時間
180日
乗員
950 (士官233人, 下士官兵690人)
武装
AK-176 76mm砲
2門
AK-630 30mm機関砲
4基
9M313 イグラ-1 SAM
16発
NSV重機関銃
4挺
搭載機
Ka-32
1機
ウラル (ロシア語 : Урал ССВ-33 、ラテン文字表記:Ural)はソ連海軍 、後にロシア海軍 が運用した情報収集艦 。1941計画「チターン」(Проект 1941 «Титан» 、ロシア語でタイタン の意味)により建造された艦で、艦番号はССВ-33 (SSV-33)である。ソ連、ロシアを通じて建造以来最大の原子力船 であり、同時に偵察を主任務とする艦として最大の艦だった。
なお、艦種記号のССВ は通信艦(Судно Связи 、Sudno Svyazyy)の頭字語であり、これが対外的な艦種だった。NATOコードネーム はカプースタ(Kapusta、ロシア語でキャベツ(Капуста)の意味)。
建造
主要な建造目的としては、アメリカ合衆国 の大陸間弾道ミサイル (ICBM)実験に際して、地上設備や中小の情報収集艦だけでは不可能であった軌道追跡を可能とするミサイル追跡艦 が必要とされたためである。アメリカ本国のケープカナベラル空軍基地 でのICBM実験は、ソ連海軍が保有する多種多様な情報収集艦による偵察も有効で、ソ連本国の観測機器による追跡も可能だった。しかし、太平洋 のクェゼリン環礁 にあるICBM実験場(現・ロナルド・レーガン弾道ミサイル防衛試験場 )は、ソ連本国からも遠く既存の情報収集艦は能力不足だった。ソ連海軍は、大型レーダーや弾道計算システムを有し、ソ連本国を離れて長期間どこにも寄港せずに洋上で情報収集を行う艦を保有していなかったが、非軍事の宇宙開発において、ソ連はコスモノート・ユーリイ・ガガーリン といった大型の衛星追跡船を既に保有していた。そこで、原子力機関を有し長期間の航行が可能で、高度な情報収集能力を有する軍事用の大型艦の建造が計画された。
ウラルは、1981年6月25日起工されて、1983年5月1日のメーデー に合わせて進水した。その後、電子機器の搭載などに時間がかかり、1989年1月7日に就役した。
設計
艦体
同型艦はないが、ウラルの艦体はキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦 を元に設計されている[ 3] 。機関は、アルクティカ級砕氷船 にも搭載されたOK-900A加圧水型原子炉 2基を主動力とし、補助動力として重油ボイラー 2基を備えた。
電子装備
任務の性格上多種のレーダー、ソナー、通信機等を備えており、その中には戦闘艦艇と同じMR-750 フレガートM2 3次元レーダー 、ABMシステム にも使用されるアルグン等が含まれていた[ 4] 。搭載された無線偵察システムはКоралл (Coral)と呼ばれ、エルブルス (英語版 ) およびEC-1046 (英語版 ) という二種類のコンピューターに影響を与えた。
兵装
武装も充実しており、艦体の前後にAK-176 76mm砲を各1門備えた他、AK-630 30 mm機関砲とNSV重機関銃 の2銃身海軍型Утёс-М を4基ずつ搭載した。これら砲填兵器の弾薬は、20分間の戦闘が可能な分量であった。艦対空ミサイル として、携帯式防空ミサイルシステム である9M313 を16発搭載した[ 1] 。
運用
洋上のウラル(1989年)
退役し、係留中のウラル
レニングラード(現・サンクトペテルブルク )のバルチック造船所 で建造されたウラルは、就役後に59日をかけて、配属地である沿海地方 へ向かった。航海には原子力潜水艦 による護衛が伴い、途中ベトナム のカムラン湾 に寄港している。沿海地方に到着したウラルはフォーキノ を母港としたが、フォーキノは空母「ミンスク 」や「ノヴォロシースク 」の母港でもあって手狭だったため、ウラルはフォーキノにほとんど入港せず、大半は近郊に停泊していた[ 5] 。
ウラルは太平洋艦隊 第38偵察艦隊の旗艦となったが、不調や事故が多く[ 6] 、本来の任務であるクェゼリン環礁のICBM実験の偵察に向かうことは無かった。その代わりに北太平洋のアメリカ海軍 ・空軍 、自衛隊 を対象としたエリント 、対潜監視活動 を行った。就役から2年後の1991年 に火災事故を起こしたが、ソビエト連邦の崩壊 に伴う予算不足で修理が行えず[ 6] 、1992年 には原子炉を停止させて任務から外れ、桟橋 に係留させたうえで士官用の宿舎に転用された[ 5] 。
2001年 、ウラルは退役してキーロフ級ミサイル巡洋艦「アドミラール・ラーザリェフ (英語版 ) (旧フルンゼ)」の側に係留された。退役の主因は、2基あった重油ボイラーのうち1基が故障したまま残りの1基を常に稼働させた結果、過負荷により寿命が予定よりも早かったためである[ 5] 。また、艦の稼働させることが高コストだったことも指摘されている[ 3] 。2008年 4月には原子炉撤去と解体のための作業船が横付けされ、2009年 には原子炉から転用可能な核燃料が撤去された[ 6] 。2012年 には、アトムフロート が原子力砕氷船 「タイミール (英語版 ) 」修理のために、ウラルの蒸気発生器 や艤装を流用する計画を企画した[ 7] が、2014年 5月12日には海外への流出を防ぐためにロスアトム が解体作業の公開入札を行うことを発表した[ 5] 。解体費用は3年で6億9,100万ルーブル で、2016年 11月30日[ 5] までに沿海地方のボリショイ・カーメニ で解体される予定だったが[ 6] 、解体に必要な費用や技術が造船所の能力よりも高すぎ、この入札は不調に終わった。同年9月に2回目の入札が行われたが、これも不調に終わった。2016年 2月に10億ルーブルで解体する3回目の入札が行われ、ようやくボリショイ・カーメニのズヴェズダ造船所 が落札した[ 8] 。同年8月21日午前7時30分頃、ウラルはズヴェズダ造船所に移動した。
登場作品
ウラルのピンバッジ
『Raid on Tokyo 』
架空艦「ゴルシコフ」が登場。艦種は「電子情報管制艦」とされ、日本の日本海 側一帯における自衛隊のレーダーや通信を無力化するほど強力な電波妨害 能力を有する軍艦 として描かれている。作中では、太平洋艦隊 に所属しており、他の太平洋艦隊所属艦とともに日本侵攻作戦「東京急行」に投入され、レーダー波の逆探知や強力な電波妨害で自衛隊のレーダー・通信網を無力化していたが、最後は架空の海上自衛隊 潜水艦 「ひきしお」の魚雷 攻撃によって撃沈 される。
『WORLD WAR Z 』
ウルシー環礁 に停泊しており、国際ラジオ放送「Radio Free Earth」の放送局となっている。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 』
特務機関NERVの監視司令艦「ウラル2世」が登場。艦内にベタニアベースの使徒保管統一管理指揮所が設置されている。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇 』
艦名不明の同型艦が登場。NERV本部付近に浮遊している。
出典
^ a b “http://warships.ru/Russia/Auxiliary_Ships/SSV/index.htm Судно связи и управления, проект 1941 ”. 2012年10月21日 閲覧。
^ Janes.com
^ a b "SSV-33 Project 1941 ." Pike, J. GlobalSecurity.org
^ “Large nuclear-powered intelligence ship Project 1941 Titan ”. 2012年10月21日 閲覧。
^ a b c d e “Самый большой в мире корабль-разведчик распилят на металл ”. 2019年7月3日 閲覧。
^ a b c d “Encouraging Young Sailors Into Keelboats & A 'Cool' Ship In The North Sea ”. 2019年7月3日 閲覧。
^ “Для ремонта ледоколов будут использоваться запчасти списанных кораблей ”. 2019年7月6日 閲覧。
^ “Тендер № 0773100000315000079 Большой Камень Приморский край Государственные закупки ”. Synapse. 2018年7月23日 閲覧。
関連項目
外部リンク