『ウインド・リバー』(Wind River)は、2017年にアメリカ合衆国で公開されたスリラー映画である。監督・脚本はテイラー・シェリダン、主演はジェレミー・レナーとエリザベス・オルセンが務めた。なお、本作はシェリダンの監督デビュー作でもある。
本作は2017年5月に開催された第70回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品され、シェリダンが監督賞を受賞した[5]。
シェリダンは、MMIW(先住民女性や少女の失踪・殺人事件を認知させるための運動)を背景に、ウインド・リバーにおける問題への意識を高めるためにこの映画を作ったと語った。
あらすじ
ワイオミング州ウインド・リバー・インディアン居留地。FWS(合衆国魚類野生生物局)のハンター、コリーは雪山に囲まれた雪原の中で、ネイティブ・アメリカンの少女ナタリーの死体を発見した。
BIA(インディアン部族警察)署長のベンは、FBI(連邦捜査局)に捜査を依頼するが、派遣されたのは新人捜査官のジェーン1人だった。ジェーンは過酷な環境での捜査に難渋し、コリーに捜査への協力を依頼した。
検視を行うと裂傷やレイプ痕があり、殺人の可能性が高いものの直接の死因は冷気を吸ったことによる肺の出血と窒息死であり他殺とは断定されなかった。
捜査を進めて行くとナタリーが極寒の中、10キロもの距離を裸足で逃げていたことが分かり、さらにナタリーの恋人マットの遺体が森の中で見つかる。
謎が深まる中、コリー、ジェーンらはマットの勤務先である掘削地の警備員たちに目星をつけるが、2人は真実とともにネイティブ・アメリカン社会の闇に直面することになる。
キャスト
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製作
2015年5月、クリス・パインとエリザベス・オルセンがテイラー・シェリダンの監督デビュー作に出演することになったと報じられた[6][7]。2016年1月、降板したパインの代役として、ジェレミー・レナーが起用されることとなった[8]。5月31日、本作の主要撮影がユタ州パークシティで始まった[9]。
公開
2016年5月13日、第69回カンヌ国際映画祭の会場で、ワインスタイン・カンパニーが本作の配給権を獲得した[10]。2017年1月、ワインスタイン・カンパニーが本作の配給権を手放したとの報道があった[11]。しかし、サンダンス映画祭の開催中に、ワインスタイン・カンパニーは再び本作の配給権を購入した[12]。
2017年10月、本作の製作総指揮を務めたハーヴェイ・ワインスタインが長きにわたってセクハラを行っていたという報道が出た。それを受けて、本作のDVD版及びネット配信版のクレジットからワインスタインの名前が消されることになった。これは賞レースで不利にならないための措置でもあると報じられている[13]。
評価
本作は批評家から高く評価されている。映画批評集積サイトのRotten Tomatoesには92件のレビューがあり、批評家支持率は87%、平均点は10点満点で7.3点となっている。サイト側による批評家の要約は「『ウインド・リバー』は観客をキャラクターが織りなすミステリーへと誘い込んでいる。脚本は知的で、俳優の演技も見事なものである。工夫を凝らした舞台設定はタイトル通りの恐ろしさを生み出している。」となっている[14]。また、Metacriticには40件のレビューがあり、加重平均値は73点となっている[15]。
『バラエティ』のオーウェン・グレイバーマンは「ヒューマニズムのある犯罪ドラマだが、興奮よりも狡知を感じる」と述べている[16]。『The Verge』は「『ボーダーライン』と『最後の追跡』から続くフロンティア三部作の終幕であり、スリリングで暴力的な作品だ」と評している[17]。『インディワイアー(英語版)』のデヴィッド・エーリッヒは本作にB評価を下し、「もし『ウインド・リバー』が他の作品と同様に、シェリダンの弱点を抱えているのだとしても、同作はシェリダンの強みを最大限活かした作品である。観客が衝撃を受けるような作品ではないが、苦みがあり、人間の本能を向き出しにした作品である。」と述べている[18]。
出典
- ^ “WIND RIVER (15)”. 全英映像等級審査機構 (August 29, 2017). July 23, 2018閲覧。
- ^ “Wind River”. Box Office Mojo. 2019年3月11日閲覧。
- ^ a b “Wind River”. The Numbers. 2019年3月11日閲覧。
- ^ 『キネマ旬報』2019年3月下旬特別号 p.53
- ^ “‘A Man of Integrity,’ ‘Wind River,’ ‘Barbara’ Take Un Certain Regard Awards at Cannes”. Variety (2017年5月27日). 2017年8月11日閲覧。
- ^ “Wild Bunch's Insiders launches Olsen, Pine film 'Wind River'”. Screen Daily (2015年5月14日). 2017年8月11日閲覧。
- ^ “Chris Pine & Elizabeth Olsen Jump Into ‘Wind River,’ Sharlto Copley Will Take On ‘Free Fire’ For Ben Wheatley”. IndieWire (2015年5月14日). 2017年8月11日閲覧。
- ^ “Jeremy Renner & Elizabeth Olsen To Star In ‘Wind River’ Pic From ‘Sicario’ Scribe And Thunder Road”. Deadline (2016年1月15日). 2017年8月11日閲覧。
- ^ “Kelsey Asbille Sails To Thriller ‘Wind River’ With Jeremy Renner & Elizabeth Olsen”. Deadline (2016年4月25日). 2017年8月11日閲覧。
- ^ “Cannes: Weinstein Co. Nabs Jeremy Renner Drama 'Wind River'”. Hollywood Reporter (2016年5月14日). 2017年8月11日閲覧。
- ^ “Sundance: Weinstein Company to No Longer Distribute Jeremy Renner's 'Wind River'”. Hollywood Reporter (2017年1月9日). 2017年8月11日閲覧。
- ^ “2017’s Sundance Sales Are In Overdrive: Here’s Why, Plus See Our Full Deal Scorecard”. IndieWire (2017年1月27日). 2017年8月11日閲覧。
- ^ “Weinstein Co. Name Stripped From 'Leap!,' 'Wind River,' 'Tulip Fever'”. Hollywood Reporter (2017年10月25日). 2017年10月29日閲覧。
- ^ “Wind River”. Rotten Tomatoes. 2017年8月11日閲覧。
- ^ “Wind River (2017)”. Metacritic. 2017年8月11日閲覧。
- ^ “‘Wind River’ Review From Sundance: Taylor Sheridan’s Frontier Thriller”. Variety (2017年1月22日). 2017年8月11日閲覧。
- ^ “Wind River is a thrilling, violent finale to the Hell or High Water and Sicario trilogy”. The Verge (2017年1月23日). 2017年8月11日閲覧。
- ^ “Wind River Review: Jeremy Renner Is An Ice Cold Cowboy In A Solid Noir”. IndieWire (2017年1月23日). 2017年8月11日閲覧。
外部リンク