アルトフルート
各言語での名称
英
alto flute
独
Altflöte
仏
flûte alto, flûte en sol
伊
flauto contralto
中
中音长笛
分類
木管楽器 (気鳴楽器 )
音域
関連楽器
演奏者
アルトフルート はフルート 属の楽器 のひとつで、木管楽器 に属する。コンサート・フルート の低音用の拡張として、フルート・ダモーレの次に位置する。低音域の目立ってやわらかい音色を特徴とする。ト調の移調楽器 であり、ピッコロ やバスフルート と同様に、ハ調のフルートと指使い は同じである。
アルトフルートの管はコンサート・フルートよりもかなり太く、演奏者はより多くの息を必要とする[ 1] 。このため、低音域の1オクターブ半でデュナーミクの変化をつけやすい。
アルトフルートのデザインを完成し、ト調(記譜より4度低い)に音程を定めたテオバルト・ベーム は、この楽器を好んでいた[ 2] 。
音域はG3 (中央ハ の下のト音)からG6 (実音でト音譜表の上第4線、三点ト)までで、さらに最高音域としてD♭ 7 まで伸ばすことができる。
イギリスの音楽ではアルトフルートのことをしばしばバスフルート と称するが、同じ名前の楽器が別に存在するために混乱のもとになっている[ 1] 。名称の混乱の原因は、現代のコンサート・フルートの音域がルネサンス時代のテナー・フルートと同じであることに起因し、テナー・フルートより低い音域の楽器なのでバスと呼ばれるのである[ 3] 。
頭部管の形状
U字形の頭部管をもつアルトフルート
まっすぐな頭部管をもつアルトフルート
アルトフルートの頭部管にはU字形のものとまっすぐなものの2種類の形状がある。U字形の頭部管は腕を伸ばす必要が少なくなるため、小さな演奏者に好まれ、重心が演奏者に近づくために、より軽く感じられる。しかしながら、まっすぐな頭部管の方が全体的に調音が優れており、より一般的に使われる[ 4] 。
アルトフルートのアンブシュア はコンサート・フルートのものに近いが、楽器の大きさに比例して大きくなる。したがって、吹口は下唇のより下の位置にあたり、唇の開きはより大きくなる。
楽曲
以下の一覧は完全であることを目的としていない。もっともよく演奏され、よく知られた代表的な曲の例としてあげてある。また、もともと他の楽器のために書かれて、後にアルトフルート用に編曲された楽曲は原則として除外されるが、例外として非常によく知られた作品は含まれており、その場合は本来の楽器を注記している。
アルトフルートのみの曲
ブルーノ・バルトロッツィ: 『カンティレーナ』
ガース・バクスター: 『柳の木による変奏曲』
ジョナサン・ベイリー:『パンのための音楽』(1982)
マイケル・チャーニ=ウィルズ:『Trystyng』
フィリップ・チャプロフスキ:『Elegia』(2007)
チャールズ・ディレイニー:『「シーズ・オブ・ラヴ 」による変奏曲』(1989)
アレクサンダー・ゲール :『Ariel Sing』(2003)
フィリップ・エルザン:『5つのミニアチュア』(1995)
ダニエル・ケスナー:『A Serene Music』(2012)
コリーン・モーシンク:『アンドロマケー』(2010)
パトリック・ナン:『Maqamat』(2002)
マイケル・オリバ:『Les Heures Bleues』(2013)
エドウィン・ロクスバラ:『ダイシャクシギ』(1994)
カイヤ・サーリアホ :『風の色』(1998)
ハービー・ソルバーガー:『Hara』
カールハインツ・シュトックハウゼン :
『Susanis Echo』、3. ex Nr. 58+ 1 ⁄2 (1985)
『Xi』、3. ex Nr. 55 (1986)
デービッド・ベネット・トーマス:『Carla』(2012)
アルトフルートとピアノ
トム・フェボニオ:『アルトフルートとピアノのためのソナタ』
ダニエル・ケスナー:『Simple Motion』(1993)
メルヴィン・ローフ:『Passing Thoughts』
フィリス・ルーク:『As The Clouds Parted』
アンドルー・マクバーニー:『The Moon by Night』(2003)
マイク・モワー:『ソネット』
ローラ・ペティグルー:『Offertoire』
アルトフルート、ピアノ、電子楽器
管弦楽曲
クラシック音楽 でアルトフルートが登場する早い例としてはニコライ・リムスキー=コルサコフ のオペラ『ムラダ 』がある[ 5] 。アルトフルートは特にイーゴリ・ストラヴィンスキー とモーリス・ラヴェル に関連し、ふたりともさまざまな管弦楽曲でアルトフルートの特徴的な音色を利用した。ラヴェルの『ダフニスとクロエ 』、ストラヴィンスキーの『春の祭典 』、フランコ・アルファーノ のオペラ 『シラノ・ド・ベルジュラック 』、セルゲイ・プロコフィエフ の『スキタイ組曲 』で使われている。ドミートリイ・ショスタコーヴィチ はオペラ『賭博師 』(未完)と『ムツェンスク郡のマクベス夫人 』、および『交響曲第7番 』で使用している。グスターヴ・ホルスト 『惑星 』のいくつかの楽章でも用いられる[ 2] 。20世紀音楽でもっとも有名なアルトフルートの用例のひとつにピエール・ブーレーズ が書いたコントラルトと6人の器楽奏者による『ル・マルトー・サン・メートル 』がある[ 6] 。
ハワード・ショア の『ロード・オブ・ザ・リング 』の音楽を代表として、現代のさまざまな映画音楽でも使用される[ 6] 。1940年以前のハリウッド映画でもときどき使われることがあった。たとえばジェローム・カーン の『空とぶ音楽』(1932)と『Very Warm for May』(1939)がそうで、どちらもロバート・ラッセル・ベネット によってオーケストレーションがなされた(自筆スコアはアメリカ議会図書館 音楽部門のジェローム・カーン・コレクションが所蔵する)。
演奏家
最近になってアルトフルートを専門とする演奏家が多数出現した。フランスの即興演奏家・作曲家であるクリスティアン・ル・デレジール、アメリカのクリス・ポッター 、イギリスのキングマ・システムのアルトフルート奏者カーラ・リーズ、ジャズ演奏家のアリ・ライアソン やブライアン・ランドルス、アメリカ出身で現在オーストラリアに住むピーター・シェリダン、スイスの作曲家・演奏家マティアス・ツィーグラーおよびシュテファン・ケラー、オランダの作曲家・演奏家アン・ラベルジュなど。日本では第21回日本フルートコンヴェンション ・アルトフルート部門で優勝した奥野由紀子 が、アルトフルート奏者としてオール・アルトフルート・プログラムによるリサイタルやCDをリリースしている。
脚注
^ a b Finding Your Flute (How to Choose, Rent, Buy a New or Used Flute)
^ a b Toff, Nancy (2012). The Flute Book: A Complete Guide for Students and Performers . Oxford, England: Oxford University Press. pp. 69-72
^ Renaissance flutes
^ Phyllis Louke - Article: Getting Started Playing Alto, Bass and Contrabass Flutes Archived February 27, 2009, at the Wayback Machine .
^ Bret Newton (2015-05-03), What to Do with New Instruments – Part 5 – The Alto Flute , Bandestration, https://bandestration.com/2015/05/03/what-to-do-with-new-instruments-part-5-the-alto-flute/
^ a b Adams, Doug (2010). The Music of the Lord of the Rings Films: A Comprehensive Account of Howard Shore's Scores, Book & CD . Los Angeles, California, USA: Alfred Music